2009年1月28日水曜日

ギョーザ事件1年  毎日新聞 特集より


今日の読売新聞からの特集記事です。
中国ギョーザ事件の一連の経緯が大変よくまとまっていました。
事件の備忘録としてブログに掲載しました。

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≪ クローズアップ2009:ギョーザ事件1年 依然、進まぬ捜査 ≫
毎日jp 毎日新聞 2009年1月28日
http://mainichi.jp/life/food/archive/news/2009/01/20090128ddm003040106000c.html

『 ◇関係冷却化懸念、日本は及び腰
 中国製冷凍ギョーザから有機リン系殺虫剤メタミドホスが検出された事件の発覚から30日で1年を迎える。製造元の天洋食品(河北省)が中国国内で再配布した回収製品で中毒事件が起きたことなどから「中国での混入」が濃厚とみられるが、捜査は依然進んでいない。中国の捜査を見守るしかない警察庁、日中関係の冷却を恐れ及び腰の外務省。他にも食の安全を巡る問題を抱える中国。真相は解明できるのか?【北京・浦松丈二、大谷麻由実、長野宏美】

 「引き続き捜査しているが、解明に至っていない」。19日に東京都内で開かれた警察庁との定期協議で、中国公安省担当者は「捜査はしているが特段の進展はしていない」との答えを繰り返した。
 日本側が「混入は日本ではないと考えている。そちらはどう考えているか」と問いかけても、中国側は同様の回答を重ねた。
 日本側は「食の安全にかかわり国内の関心も高い。早期解決に取り組んでほしい」と要請するのが精いっぱい。警察庁幹部は「知りたいことを何も聞けずに不満の残る会合だった」と振り返った。
 千葉、兵庫両県警の共同捜査本部は、複数の理由から日本での混入の可能性は低いと判断。警察庁は「中国で捜査しない限り解決できない」と公安省に捜査協力を求めてきた。
 警察庁幹部は「原因究明しないと同様のことが起きる恐れがある」ともどかしさを押し殺すように話した。
 「メタミドホスはごく少量でも強烈な刺激臭を放ち、異変に気づくはず。これが捜査のカギだった」。中国側関係者はこう証言した。生産ラインで働くのは臨時工が中心。公安省は臨時工にメタミドホスのにおいをかがせたが、有力な手がかりは得られなかった。
 次に製品を保管する工場の冷凍庫での混入の可能性が浮上した。公安省は冷凍庫を管理する従業員数人を拘束したほか、連日、捜査員7、8人が工場で捜査するが進展はない。
 河北省では昨年9月、乳製品メーカー「三鹿集団」の化学物質メラミン入り粉ミルク事件が発覚。内外を揺るがす事件を同時に抱えた河北省は対応に追われた。地元政府幹部の責任問題に発展した粉ミルク事件が、ギョーザ事件の捜査を遅らせた可能性は否めない。

 こうした捜査状況に対し、外務省幹部は「中国国内の刑事事件であり、外交問題からは切り離された感が強い」と話す。「下手に動かして日中関係が再び冷却化する事態は避けたい」との思いもある。

 胡錦濤国家主席は昨年7月、福田康夫首相(当時)に「私が直接指示を出した」と伝えた。だが同12月の日中首脳会談では「早期の真相究明を望む」と迫る麻生太郎首相に、温家宝首相は「意思疎通、協力を継続したい」と述べるにとどめた。
 「日中関係改善に積極的だった福田前首相が辞任し、麻生政権は求心力を欠く。いつまで続くか分からない政権と、真剣に交渉する国があるだろうか」。政府関係者は語る。

 ◇中国内まだ「経営優先」
 「ボーナス? 会社存続も危ういのに」
 天洋食品で安全管理を担当する30代の男性社員は嘆く。事件後、工場は生産停止に追い込まれ、暖房も切られた。残業や夜勤がなくなり、給料が半減した。
 会社関係者によると工場長は最近、犯人逮捕につながる情報提供者に対し、公安当局の懸賞金30万元(約390万円)に上乗せして35万元(約455万円)を支払うと申し出た。一刻も早い犯人逮捕で生産を再開させたい思いからだという。

 天洋食品は河北省政府が海外輸出を目的に設立した国有企業。「日本は再開に反対するだろうか」。10年以上働く別の社員は、なお続く生産停止は「日本の圧力」と感じているようだった。
 河北省当局が昨年4月、天洋食品が回収した冷凍ギョーザを地元企業約20社に購入させていたことがこのほど明らかになった。

 昨夏の北京五輪を経て、中国でも食の安全への関心は高まる。だが、メラミン混入など食品関連の事件は後を絶たない。地方では依然、地元企業の「経営優先」という現実は変わらない。

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 ■ことば
 ◇メタミドホス
 有機リン系殺虫剤で、摂取すると嘔吐(おうと)や下痢などの急性中毒症状が出る。日本では農薬としての使用が認められていない。中国でも食品への混入や残留農薬による被害が相次ぎ、07年に使用が禁止された。08年1月には生産や販売、所持も禁止する通達が出されたが、安価で殺虫効果が高い農薬として無許可で販売され、使用されるケースが後を絶たないと指摘されている。

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 ◆中国製冷凍ギョーザ中毒事件の経緯◆

 【07年】
12月28日 千葉市の家族2人が中毒症状
 【08年】
 1月 5日 兵庫県高砂市で家族3人が中毒症状
   22日 千葉県市川市で家族5人が中毒症状
   30日 千葉、兵庫県警が中毒事件を公表
   31日 天洋食品生産停止。中国で捜査開始
 2月 7日 兵庫県警が密封袋の内側からメタミドホス検出と発表
   28日 中国公安省が「中国国内での混入の可能性は極めて低い」と発表
 4月    天洋食品が回収した製品を約20社が購入、その後に従業員が中毒症状
 7月初旬  中毒事件が6月に中国で起きていたと日本政府に通報。8月に発覚
秋以降    中国公安省が従業員数人を拘束
 【09年】
 1月24日 回収製品で健康被害があったことを国営新華社通信(英語版)が報道  』

毎日新聞 2009年1月28日 東京朝刊
                                    以上

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