2009年3月30日月曜日

最高の野菜栽培と障害者雇用の両立 農業生産法人「ハートランド」


野菜栽培と障害者雇用の両立を目指す、農業生産法人「ハートランド」 の紹介記事です。

このような民間の取組みは、是非頑張って成功させて欲しいと思います。


私は、障害を抱える人たちの日本の就労状況は、恐ろしく少ないと感じていました。

この記事によると、2008年に農林水産業で雇用された身体、知的、精神障害の方は、日本全国でたったの377人、163社だそうです。

事務用品の「コクヨ」さん、応援します、頑張って他企業のお手本となってください。

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≪ 農業生産法人「ハートランド」 食の明日 まもり―つなぐ―いのち ≫
YOMIYURI ONLINE 読売新聞2009年3月30日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/news/20090329-OYT8T01009.htm

「 最高の野菜栽培  障害者雇用両立
 約3000平方メートルの広大なビニールハウス。空調の風になびくホウレンソウの緑がまぶしい。荒堀敦次(19)が、水耕栽培の「定植ベッド」の清掃に汗を流す。中腰で黙々とブラシで洗い、手のひび割れが痛々しい。「腰が痛くなるから整体は欠かせない」。荒堀は笑い、背筋を伸ばすと、すぐ作業を再開した。無農薬栽培なので汚れは大敵だ。

 泉南市の丘陵地にある農業団地(約7ヘクタール)の一画で、農業生産法人「ハートランド」が無農薬のサラダホウレンソウを水耕栽培。19~33歳の知的、精神障害のある社員8人が、育苗から定植、栽培、出荷の全作業を手がけ、1日約3000袋を京阪神のスーパーや百貨店などに出荷する。メニューに取り入れるホテルグランヴィア京都(京都市)の総料理長、佐藤伸二(52)も「生で食べられるので栄養をそのまま取れ、すっきりした味わい」と太鼓判。鉄分と食物繊維、βカロチンが豊富で、「総合栄養野菜」と呼ばれるホウレンソウ。サラダホウレンソウは茎が細くて葉が柔らかく、収穫3~4日前から肥料を与えず、硝酸の蓄積とアクの成分・シュウ酸が抑制されて苦みはない。

 「彼らが働きやすいよう、障壁を取り除くのが私の役割」と社長の仲井道博(58)。安定供給できるのは徹底したコンピューター管理だ。同法人では無数に穴が開いたトレーに種をまき、育苗室に移す。完全密閉の室内は、ほぼ無菌状態。室温19~22度、湿度60%に保たれ、「プロ農家並みの育苗が可能」(仲井)。高さ7~8センチに育った苗をベッドに移し、夏場は2週間、冬場は25日ほどで収穫。▽ハウス内の温度管理・水やり▽培養液の管理▽日光の強弱を調節する屋根の遮光カーテン▽室温調整保温シートの開閉――など、24時間管理の〈最先端ハウス〉だ。

 同法人は事務用品大手「コクヨ」(大阪市)の子会社で、2007年10月に操業を開始した。新しい障害者雇用を模索していたコクヨが、天候に左右されず、育苗、栽培、出荷という安定的な仕事が確保できる水耕栽培に着目。日本の農業人口は20年前の約半分にまで減少、食料自給率も4割を切った。残留農薬など外国産作物への消費者の不安も高まる。「安全・安心な野菜への需要は大きくなる。障害者雇用と高付加価値作物の栽培の両立は可能になる」と踏んだ。

 仲井も「障害を抱えているという事情はあるが、企業だから収益性がないと意味がない。数字にはこだわりたい」という。初めての農業、理解度……。当初は1日60袋しか出荷できず「がく然とした」が、社員の特性を生かした人員配置や、ミーティングを増やすなどし、現在は最大4000袋分の生産が可能になって商業ベースに乗りつつある。今年は、初の黒字化を目指せるところまできた。

 製作部長の飯田秀光(54)は、ミスをした社員に「給料分以上の仕事をしないと会社が持たないんやで」と厳しい。そこにあるのは「健常者と障害者」でなく「上司と部下」の関係。冬場の生産量は下がるが、社員から「もう少し働かな給料減るわ」との声。「働いた分、給料も上がる。高付加価値なら売れる、との思いは私も社員も同じ。主役の彼らがいないと、おいしい商品は作れない」と、作業を見守る仲井の目は優しい。

 午後5時過ぎ。仕事を終えた荒堀が帰り支度を始めた。昨年4月に親元から離れ、泉南市内のグループホームで自立生活を始めた。入所費用や食費、整体費用……。すべて自分で稼いだ給与でまかなう。「60歳までに沖縄で家を買って農業をしたい。ゴーヤなんていいかもね」。大きな夢をかなえるため、今日もサラダホウレンソウと“格闘”する。   (妻鹿国和)

     (文中敬称略)

 メモ 厚生労働省の「障害者の民間企業における雇用状況調査」によると、2008年に農林水産業で雇用された身体、知的、精神障害者は計377人(163社)と、03年の309人(128社)に比べて約2割増加した。一方、官民協働で障害者の農業分野への就労を促す取り組みも。中国四国農政局(岡山市)は3月、「岡山地域農業の障害者雇用促進ネットワーク」を設立。関係者が協力し、受け入れ農家リスト作りや〈マッチングセミナー〉などを実施予定だ。農林水産省人材育成課は「労働の場を提供するだけでなく、担い手不足解消にもつながる」と期待している。 」

(2009年3月30日 読売新聞)

                                                       以上

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